「Gygaxian Fantasy Worlds」シリーズ (2/2)
「Gygaxian Fantasy Worlds」シリーズ (1/2)の続き。
『Gary Gygax's Insidiae』
この本には『The BrainStormers Guide to Adventure Writing』と副題がついており、その名の通りシナリオ作成の手引き書です。ストーリーの様々な要素を分類し(ex.「敵」「妨害者」「支援者」)、各々について説明と使い方のアドバイスが書かれています。内容は以下のの5章構成になっています。
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- 環境
冒険者をとりかこむ自然・社会環境について書かれています。社会環境は何処にどのような対立構造があるかということが主眼となっています。
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- 役割
登場人物が物語上どのような役割を担っているかを味方、競争、敵、妨害、中立、支援者、切り札の7種類にを分類して説明しています。
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- 特徴
登場人物について設定しておくべきことについて書かれています。
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- プロット
ストーリーの作り方について「設定から考える」「イベントから作る」「起承転結にあてはめていく」の3つの方法を紹介しています。
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- 冒険の目的
冒険の目的について様々な例をあげて説明しています。先のプロットでは「村はずれに悪い魔法使いがいてダンジョンを突破して魔法使いを倒すが、帰り道で魔法使いの死によって解放された悪魔と戦うことになる。」といった展開を作る方法が書かれています。これだけでD&Dの昔のモジュールとしては充分なのですが、この章では冒険そのもの目的は何か(村娘が魔法使いにさらわれたので救出に行くなど)を設定する方法について書かれているのです。先のプロットと冒険の目的を別の章にして考えるところがいかにもD&D風味だと思いました。
巻末にはサンプルとして完成したプロットがいくつかと、ランダムチャート集が載っています。ランダムチャートはダイスを振ればシナリオができるような代物ではないのでほんのおまけ程度に考えた方がよいでしょう。
この本はシナリオ作成の手引き書としては悪くありませんが、わざわざ英語で読むほどの代物ではないというのが正直な感想です。
『Gary Gygax's Nation Builder』
この本には『The Geographer's Guide to Setting Creation』と副題がついており、その名の通り1つの国・地域の設定を作るための手引き書です。内容は大きく分けて以下のの3章構成になっています。
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- 国家
国家の種類、地勢、統治方法について説明しています。
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- 社会
共同体の種類、社会の要素、経済について書かれています。
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- 文化
宗教、魔法、技術レベル、伝承について書かれています。
何とも内容の薄い本です。D&Dの『ダンジョンマスターガイド』の同項の解説部分を内容を増やさずに項目だけ増やしたような感じです。例示も多いのですが、具体的にどのように設定すれば良いのかが読んでいてもわからないのが難点。数字が必要な部分はダイスロールで決めるようにしてあるなどしてあるのですが、いかにも不具合がありそうな場所ができそうな感じです。
『Gary Gygax's Cosmos Builder』
宇宙を設定するためのSFな本…かと思ったら違いました。これはコスモロジー、つまりフォーゴトンレルムやクリンといったような多くの次元界から構成される世界を作るための本です。新たなコスモロジーや次元界の設定方法について書かれており、次元界のタイプごとに分かれた9章構成となっています。
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- 次元の構造と時空について
- 物質界
- 元素界
- エーテル界
- セレスチャル界
- 冥界
- 天上界
- 渾沌
- スフィア、ポケットレルム、非空間的な次元
それぞれについてその役割、特徴、配置、他の次元界と関連性が考えられるかが説明されています。また欄外のコラムなどでは「魔法と次元界の関係」や「新たな次元界のネタだし方法」なども書かれています。
D&Dの『次元界の書』と比べてみると、細分化されてそれぞれに個性が加えられたD&Dの次元界ではつかみづらくなっている次元界の概要が見えてくるような気がします。例えて言うなら国境と国名の書かれた地図では見えなかったものが、地形だけが書かれた地図で見えてきたような感じというのでしょうか。シリーズの中ではもっとも創作心をかきたてられる本です。
Gygaxian Fantasy Worlds Collector's Pack
- 作者: Gary Gygax,Peter Bradley
- 出版社/メーカー: Troll Lord Games
- 発売日: 2009/05/30
- メディア: ハードカバー
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