「Gygaxian Fantasy Worlds」シリーズ (1/2)

昨年からダイアリーの下書きに放り込みっぱなしだった記事を、せっかくなのでGary Gygax一周忌にあわせて引っ張り出してきました。

イベントのセール品でTroll Lord Gamesの「Gygaxian Fantasy Worlds」シリーズを入手。このシリーズはゲームマスター向けのガイドブックで、中世風ファンタジー世界を作成・描写する際の資料集です。基本的に特定のシステムや世界へ依存しないように書かれていますが一部についてはd20のデータが併記されています。
ラインアップは以下の通り。

  • 『Gary Gygax's The Canting Crew』
  • 『Gary Gygax's World Builder』
  • 『Gary Gygax's Living Fantasy』
  • 『Gary Gygax's Extraordinary Book of Names』
  • 『Gary Gygax's Insidiae』
  • 『Gary Gygax's Nation Builder』
  • 『Gary Gygax's Cosmos Builder』


こうやって列記するとD&Dに登場する呪文名みたいですね。でも最初の数冊以外は著者がGygaxじゃなかったりします。シリーズ監修ってことなのでしょうか。
なお『The Canting Crew』だけは購入の際に見あたらなかったので未入手です。またカタログには『Gary Gygax's Essential Places』という本も存在しますが未刊のままシリーズ展開が終わっています。

『Gary Gygax's The Canting Crew』

 未入手ですが下層社会について解説した本だそうです。符丁・スラングの解説などが書かれているとか。

『Gary Gygax's World Builder』

 中世ファンタジーに登場する様々な要素を集めた本。解説やイラストが書かれている箇所もあれば、名前が列記してあるだけの部分もあり。内容は以下のの3章構成になっています。

    • 交易品

  武器や防具の名称や部位の呼称から、度量衡の変換式や輸送の手段まで載っています。ただ、武器・防具以外の大半は名称の羅列だけで、具体的なデータ(重量、価格、製造技術やコスト)がありません。そのため使い勝手は今ひとつ。例えばビールの種類を名前だけ並べられても参考にならない。物品リストとしてはロールマスターの『...and a 10-Foot Pole』の方がずっと役に立つと思います。

    • 地理

  地形や気候、植生や生物について列記されているのですが前項と同様に最低限の解説がついているか名称が羅列してあるだけ。ただ、ところどころにあるコラムはそこそこ使えるものがあります。例えば1つの土地で何をどのくらい養うことができ、余剰はどれくらい発生するかをエーカー単位で計算する記事など。(家族を2人が食べていくのに2エーカー、豚が2頭、羊が1頭でそれぞれ1エーカー。土地が全部で×エーカーあるから、余りの土地からこれだけ収入が入るとして…といった具合。)

    • 住居

  建築物の種類や各種材料、建物のパーツや社会組織についての少ない説明と名称の羅列。


 巻末には申し訳程度にランダムチャート集もついています。でも一覧にほぼ等分布で数字がつけてあるだけ。この本は「詰め込みすぎ」の一言に尽きます。

『Gary Gygax's Living Fantasy』

 中世ファンタジー世界の生活ガイド。様々なサービスや社会の説明が数字データ付きで説明されています。呪文サービスなどの説明箇所ではd20システムの呪文が引き合いに出されてわかりやすくなっており、価格表示もここだけgp表示になっているという親切設計。なお、このシリーズは基本的に価格は$表示で書かれています。*1内容は以下の2章構成。

    • 生活

 移動の際に必要となることが多く書かれています。様々な交通手段、通行税や市門の構造、建造物になど。
 そして魔法と生活の関わりについての説明。例えばどんなサービスが考えられるかなど。また生活に役立ちそうな追加魔法もd20形式で載っています(色を塗る呪文、玩具を動かす呪文など)。

    • 社会

 組織と身分についての説明が書かれています。身分や生活レベル*2の説明は数字を交えてわかりやすく説明されています(「この階級ではおよそ○%が日雇い労働者である」など)。いくつかについては1日の生活のおおまかなタイムラインまで書かれています。また支配階級の項には魔術と統治の関わりについての記事など興味深い記事も少しだけあります。


 この本は解説とシナリオでに使うための数字がほどよい割合で書かれています。普通のシティーアドベンチャーをやるには十二分の内容、特化したシナリオ(ex.商人PCの行商シナリオ)をやるにはよい参考書の1冊になると思います。

『Gary Gygax's Extraordinary Book of Names』

 名前について書かれた本。内容の大半は地域ごとの人名についてで、その後に組織名、称号、地名についての説明があります。内容は以下の5章構成。

    • 名前についてのアウトライン

 名前の歴史や文字について、名前と魔術の関係についてなどの簡単な説明。

    • 人名

 世界各地の人名について。この章がこの本の大部分を占めます。地域や国ごとにまず区分し、いくつかの地域については中世と現在名前の両方について書かれています。命名法則の説明も適確なうえサンプルの姓や名も多く載っており素晴らしいの一言に尽きます。試しに日本の項を見てもツッコミをいれたくなる部分は殆どありません。また地域内の区分も細かくアジアだと中国(現代・中世)、インド(現代・サンスクリット)、日本(現代・中世)、朝鮮、モンゴル、チベットの名前が簡単に作れます。非常に汎用性が高く『Pendragon』で急にゲール語の名前が必要になったり、『クトゥルフの呼び声』で急にポリネシア人の漁師の名前が必要になってもこれさえあれば平気です。

    • 称号や組織名

 二つ名(“鉄壁の”など)の作り方、称号についての説明、名称を他言語にする際のガイドライン、組織名(「皇帝の剣」など)の作り方について。

    • 地名

 地名や酒場・宿の命名について。この章は残念ながらやや英語メイン。

    • ファンタジックな名前

 ファンタジックな名前のつけ方とサンプルたくさん。あと種族ごとにそれっぽい名前を付けるランダムチャートなど。


 シリーズ中イチ押しの本。上でも書きましたがあらゆるゲームで使える本だと思います。



長くなってきたのでその2へ続く。
各本の書影を貼ろうと思ったのですがこのシリーズについてはAmazonには画像がなかったり、下手するとAmamzon.jpに本のデータすらないものがあります。5月にセットがでるようなのでそれを貼っておきますがセットの中身に『Gary Gygax's Cosmos Builder』が見あたりません…。
あと先日までDriveThruRPGでPDF版を売っていたはずなのですが今は見あたらない。Why?

Gygaxian Fantasy Worlds Collector's Pack

Gygaxian Fantasy Worlds Collector's Pack

*1:レートは巻頭に書かれており 1$ = 5cp だそうです。

*2:ルーンクエスト 上級ルール』にも似たような項があり、そちらには階級ごとの身代金の相場まで載っています。